再資源化事業等高度化法とは?3類型の認定で不要になる許可・報告公表制度・初の認定事例を解説
「再資源化事業等高度化法の認定を取れば許可が不要になる、とは聞いたけれど、具体的にどの許可がどの条件で免除されるのか分からない」——そんな声が廃棄物・リサイクル業界の現場から多く聞こえてきます。
正式名称は「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」(所管:環境省)。2024年5月29日に公布され、2025年11月21日に全面施行されたこの法律は、廃棄物処理業界の広域展開・技術革新・脱炭素投資における制度的な障壁を一気に取り除く可能性を秘めた重要立法といえます。
本記事では、3つの認定類型ごとに「どの許可が不要になるか」を表で即示するところから始め、申請フロー・補助金・税制優遇・広域認定制度やプラスチック資源循環促進法との制度間比較まで、実務担当者が意思決定できるレベルの情報を網羅的に解説します。廃棄物処理・リサイクル業の経営者、大企業の環境・CSR(企業の社会的責任)部門担当者、環境コンサルタントの方々にとって、特に参考になる内容でしょう。
監修:劉 泰宏(株式会社Canopus 代表取締役)
東京大学教育学部卒業後、野村総合研究所に入社。NRI Singaporeへの出向を経て、同社Department Headを務める。2022年に株式会社新関西テクニカ常務取締役、同年12月に株式会社Canopus代表に就任。
再資源化事業等高度化法とは?
再資源化事業等高度化法(正式名称:資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律、令和6年法律第41号)は、廃棄物の再資源化を進め、温室効果ガスの削減と再生資源の質・量の確保を両立させるための法律です。2024年5月29日に公布され、2025年2月1日に一部、2025年11月21日に全面施行されました。
柱は大きく2つです。1つは、環境大臣の認定を受けた再資源化の事業について、廃棄物処理法の許可を不要とする特例を設ける認定制度。もう1つは、処分量の多い産業廃棄物処分業者に再資源化の実施状況の報告を求め、国が公表する報告・公表制度です。認定の類型と、不要になる許可は次のとおりです。
| 認定類型 | 申請者・対象 | 収集運搬業の許可 | 処分業の許可 | 処理施設の設置許可 |
|---|---|---|---|---|
| 類型① 高度再資源化事業 | 申請者・廃棄物の種類を限定しない(家電4品目を除く) | 不要 | 不要 | 不要 |
| 類型② 高度分離・回収事業 | 指定された廃棄物(太陽電池、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池) | — | 不要 | 不要 |
| 類型③ 再資源化工程高度化事業 | 廃棄物処理施設の設置者 | — | — | 認定計画に従った変更は「変更許可を受けたもの」とみなす |
出典:環境省「再資源化事業等高度化法 広報サイト(早わかり高度化法)」をもとに作成。
いずれの類型も、許可が不要になるのは認定を受けた計画の範囲内に限られます。計画の範囲を超える処理には、従来どおり廃棄物処理法の許可が必要です。
法律制定の背景:廃棄物処理法の壁と資源循環政策の転換点
廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は1970年に制定された歴史ある法律です。当時の主な目的は「生活環境の保全と公衆衛生の向上」であり、廃棄物は「処理・処分すべきもの」として位置づけられていました。
しかし半世紀以上が経過した現在、廃棄物に対する社会的認識は大きく変化しています。EUでは、廃棄物由来の再生材(リサイクル素材)の利用義務化規制が包装材料を対象に段階的に強化されており、日本の製造業・リサイクル業も国際的なサプライチェーン基準への対応を迫られている状況です。国内でも、プラスチックや金属スクラップなど特定資源の国外流出防止と国内再生利用促進が重要な政策課題となっています。
一方、廃棄物処理法は都道府県単位での許可制度を基本としており、複数都道府県で事業を展開しようとすると、都道府県ごとに収集運搬業許可・処分業許可・施設設置許可を個別に取得する必要があります。環境省の検討資料によれば、廃棄物処理施設の老朽化も進んでおり、処理能力の維持・更新が業界全体の課題です。こうした規制の構造が新技術の導入障壁となり、国内リサイクル率の向上を妨げてきたというのが業界の実態といえます。
再資源化事業等高度化法は、こうした廃棄物処理法の「縦割り・地域割り」の壁を乗り越えるための補完立法として位置づけられます。サーキュラーエコノミー(循環経済)の推進という国際的潮流と、国内産業の競争力強化という経済政策の両面から、廃棄物を「資源」として高度に利活用する事業者を国が認定し、規制の特例を与えるという発想に基づく制度設計です。
廃棄物処理法の根本を変えるのではなく、優れた事業計画を持つ事業者に対して「認定」という形で特例を付与する点が、法政策上の重要な特徴といえます。この制度設計の背景にある政策方針は循環経済を国家戦略に位置づけた背景と国際動向で解説しています。
3つの認定類型の違い
3つの類型は、対象となる事業と、特例の内容が異なります。類型①は申請者や廃棄物の種類を限定しないため、処理業者だけでなく、製造業者などが処理業者と組んで再生材を供給する事業にも使える可能性がある点が特徴です。
類型①:高度再資源化事業──収集運搬・処分・施設の許可が不要
再生材の需要に応じて、廃棄物を収集し、再資源化して、製造業者などに再生材を供給する事業が対象です。認定を受けると、計画の範囲内で、収集運搬業・処分業の許可と処理施設の設置許可が不要になります。都道府県ごとに許可を取り直す必要がないため、広域で回収・再資源化する事業を組み立てやすくなります。
2026年4月30日に初めての認定が行われ、例えば石坂産業株式会社(埼玉県)は、建設系混合廃棄物等を破砕・選別し、ポリプロピレンを自動車部品の製造事業者に、金属を精錬事業者に供給する計画で認定を受けています(出典:関東地方環境事務所)。
類型②:高度分離・回収事業──指定された廃棄物の高度な分離・回収
分離・回収が難しく、高度な技術が必要な廃棄物として国が指定したもの(太陽電池、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池)について、高度な技術で分離・回収を行う事業が対象です。認定を受けると、計画の範囲内で処分業の許可と処理施設の設置許可が不要になります。2026年4月には、使用済み太陽光パネルのガラスを独自の工法で分離し、板ガラスの原料に戻す事業が認定されています。
類型③:再資源化工程高度化事業──設備更新の手続きを簡素化
既存の廃棄物処理施設の設置者が、温室効果ガスの削減などにつながる設備の導入や工程の改善を行う事業が対象です。認定を受けた計画に従って施設を変更する場合は、廃棄物処理法の「変更許可を受けたもの」とみなされます。環境省の算出例では、廃プラスチック類のマテリアルリサイクル施設の機器更新などが想定されています。
申請に必要な計画のポイント
- 再資源化の内容と量、再生材の供給先などを定めた事業計画
- 温室効果ガスの削減効果と資源循環の効果の算定(環境省が算出ガイドラインと算出例を公表)
- 施設・設備、実施体制、生活環境の保全のための措置
- 欠格要件に該当しないこと
申請様式や類型ごとの手引きは、環境省のページで公開されています。
施行状況と認定の状況
- 2024年5月29日:公布
- 2025年2月1日:一部施行
- 2025年11月21日:全面施行(認定制度の開始)
- 2026年4月30日:初めての認定(類型①・②など)
- 2026年6月30日:報告・公表制度の初回の報告期限(2025年度の実績)
認定の状況は、環境省のページで随時公表されています。申請を検討する場合は、環境省の委託を受けたコールセンター(公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団)で、事前相談や申請内容の相談を受け付けています。
処分量の多い処分業者に求められる報告・公表制度
前年度に処分した産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除き、埋立処分・海洋投入処分を除く)が1万トン以上、または廃プラスチック類が1,500トン以上の産業廃棄物処分業者は「特定産業廃棄物処分業者」として、廃棄物の種類と処分方法ごとに処分量と再資源化量を毎年度国に報告します。報告の内容は国が公表します。
初回は、2025年度の実績を2026年6月30日までに報告しました。報告は専用のシステム(産業廃棄物処理事業振興財団の報告・公表制度システム)か、報告様式の提出で行います。排出事業者にとっては、委託先の再資源化の状況を比べやすくなるため、委託先選びの判断材料にもなります。
税制・融資などの支援措置
認定を受けた事業の設備については、法人税の特別償却や固定資産税の特例などの税制措置が設けられています。また、日本政策金融公庫の「環境・エネルギー対策資金」による融資も用意されています。対象設備や要件は環境省のページで確認してください。
なお、認定を受けたからといって補助金が自動的に受けられるわけではありません。資源循環の設備投資や実証で使える国の補助金(経済産業省「自律型資源循環システム強靱化促進事業」、環境省「プラスチック等資源循環システム構築実証事業」など)は別途公募されます。詳しくは廃棄物関連事業の補助金・交付金一覧をご覧ください。
広域認定制度・プラスチック資源循環促進法との違い
許可の特例となる制度は、高度化法以外にもあります。実務で混同されやすい制度を比べると、次のとおりです。
| 比較の軸 | 廃棄物処理法の広域認定制度 | プラスチック資源循環促進法の認定 | 再資源化事業等高度化法の認定 |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 製品の製造事業者等が、自社製品が廃棄物になったものを広域で回収・処理 | プラスチック使用製品の自主回収・再資源化、排出事業者による再資源化 | 類型①は廃棄物の種類を限定しない(家電4品目を除く)、類型②は指定廃棄物、類型③は処理施設 |
| 不要になる許可 | 収集運搬業・処分業の許可 | 認定計画の範囲で、収集運搬業・処分業の許可 | 類型により、収集運搬業・処分業の許可、施設の設置許可(類型③は変更許可とみなす) |
| 主な申請者 | 製造事業者等 | 製造・販売事業者等、排出事業者 | 類型①は申請者を限定しない、類型③は施設の設置者 |
| 認定する者 | 環境大臣 | 主務大臣 | 環境大臣 |
目安として、自社製品を回収して処理する仕組みをメーカー主体でつくるなら広域認定制度、プラスチック製品の回収・再資源化ならプラスチック資源循環促進法、廃棄物の種類を問わず再生材を安定して供給する事業や設備の高度化なら再資源化事業等高度化法が候補になります。複数の制度が当てはまる場合もあるため、所管の窓口に事前相談して判断します。
自社製品のリサイクルループをどの制度で組むべきか検討している場合は、資源循環・リサイクルループの事業化支援もご覧ください。
認定申請の流れと取得後の対応
- 事前相談:コールセンターや環境省(環境再生・資源循環局 資源循環課)に事業の概要を伝え、該当する類型と必要な書類を確認します。
- 計画の作成:類型ごとの手引きに沿って、事業計画、温室効果ガス削減効果・資源循環の効果の算定、施設・体制の資料を準備します。
- 申請・審査:申請書類を提出し、審査を受けます。必要に応じて追加資料の提出を求められます。
- 認定・事業開始:認定を受けた計画の範囲で、許可の特例を受けて事業を行います。
申請の準備には、計画の作成や効果の算定に時間がかかります。設備投資や事業開始の予定から逆算して、余裕をもって事前相談を始めることをおすすめします。
認定を受けた後も、計画に沿って事業を行い、実施状況を報告することが求められます。計画に従っていない場合は改善の命令や認定の取消しの対象となり、許可の特例も受けられなくなります。また、廃棄物の処理基準など廃棄物処理法上のルールがすべて不要になるわけではない点にも注意が必要です。詳細は法令と申請の手引きで確認してください。
まとめ:今日から始められる具体的なアクション
再資源化事業等高度化法は、認定を受けた再資源化の事業に許可の特例を設けるとともに、処分量の多い処分業者に再資源化の実施状況の報告を求める法律です。2025年11月に全面施行され、2026年4月には初めての認定も行われました。自社の事業に関係するかどうかを、次の順に確認してみてください。
- 類型の当てはめ:再生材を供給する事業を広域で行いたいか(類型①)、太陽電池・蓄電池の分離・回収か(類型②)、既存施設の設備更新か(類型③)を整理する
- 事前相談:コールセンターや環境省に事業の概要を伝え、該当する類型と必要な書類を確認する
- 効果の算定の準備:環境省の算出ガイドラインに沿って、温室効果ガス削減効果と資源循環の効果を試算する
- 報告・公表制度の確認(処分業者):前年度の処分量が1万トン以上、または廃プラスチック類が1,500トン以上なら、毎年度の報告の対象になる
- 委託先の確認(排出事業者):委託先の認定の有無や公表される再資源化の状況を、委託先選びの判断材料に加える
制度の詳細は省令・告示・手引きで更新されることがあるため、申請前には環境省の最新情報を確認してください。
Canopusでは、新たな許可の取得、補助金の獲得、新規事業の計画と実行を支援しています。高度化法の認定を含めた事業スキームの検討は、資源循環・リサイクルループの事業化支援からお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
再資源化事業等高度化法はいつから施行されていますか?
2024年5月29日に公布され、2025年2月1日に一部施行、2025年11月21日に全面施行されました。認定制度は全面施行とともに始まり、2026年4月30日に初めての認定が行われています。
再資源化事業等高度化法の認定を受けると廃棄物処理法のどの許可が不要になりますか?
類型によって異なります。類型①(高度再資源化事業)は収集運搬業・処分業の許可と処理施設の設置許可、類型②(高度分離・回収事業)は処分業の許可と処理施設の設置許可が、認定計画の範囲内で不要になります。類型③(再資源化工程高度化事業)は、認定計画に従った施設の変更が「変更許可を受けたもの」とみなされます。計画の範囲外の処理には、従来どおり許可が必要です。
報告・公表制度の対象になるのはどんな処分業者ですか?
前年度に処分した産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除き、埋立処分・海洋投入処分を除く)が1万トン以上、または廃プラスチック類が1,500トン以上の産業廃棄物処分業者です。廃棄物の種類と処分方法ごとに、処分量と再資源化量を毎年度国に報告します。
再資源化事業等高度化法で利用できる補助金や税制優遇措置はどのようなものがありますか?
認定を受けた事業の設備に対する法人税の特別償却や固定資産税の特例、日本政策金融公庫の「環境・エネルギー対策資金」による融資があります。補助金は認定とは別に公募される国の事業(経済産業省「自律型資源循環システム強靱化促進事業」、環境省「プラスチック等資源循環システム構築実証事業」など)を個別に検討します。要件は年度ごとに変わるため、最新の公募要領を確認してください。