廃液の処理方法と業者の選び方|区分・特別管理の基準と委託の注意点
工場や研究所、品質管理の現場から出る廃液は、成分によって「廃酸」「廃アルカリ」「廃油」「汚泥」など区分が変わり、強い酸性・アルカリ性や引火性のものは特別管理産業廃棄物になります。区分を誤ると、許可のない業者に委託してしまったり、処理施設で事故が起きたりする原因になります。
この記事では、廃液の区分の考え方、特別管理産業廃棄物になる基準、処理方法と業者の選び方、委託の注意点を整理します。
監修:劉 泰宏(株式会社Canopus 代表取締役)
東京大学教育学部卒業後、野村総合研究所に入社。NRI Singaporeへの出向を経て、同社Department Headを務める。2022年に株式会社新関西テクニカ常務取締役、同年12月に株式会社Canopus代表に就任。
廃液はどの産業廃棄物に当たるか
「廃液」は法律上の区分名ではありません。液状の廃棄物は、主な成分によって次のように区分します。
| 区分 | 主な例 |
|---|---|
| 廃酸 | 酸性の廃液。廃硫酸、廃塩酸、エッチング廃液、酸洗い廃液 など |
| 廃アルカリ | アルカリ性の廃液。廃ソーダ液、アルカリ性の洗浄廃液、写真現像廃液 など(写真定着廃液は廃酸) |
| 廃油 | 鉱物性・動植物性の油、廃溶剤(シンナー、アルコール類など)、潤滑油・切削油 など(水溶液などは性状によって区分が変わる場合がある) |
| 汚泥 | 泥状の物。排水処理の沈殿物、泥状の塗料かす、研磨くずを含む泥 など |
複数の性状を持つ廃液(例:油分を含む酸性の廃液)は、組成に応じて該当する複数の区分の混合物として扱い、それぞれの区分の許可を持つ業者に委託します。区分の判断に迷う場合は、所在地の都道府県・政令市に確認します。
特別管理産業廃棄物になる廃液
| 区分 | 特別管理産業廃棄物になるもの |
|---|---|
| 廃酸 | 著しい腐食性を持つもの(pH2.0以下) |
| 廃アルカリ | 著しい腐食性を持つもの(pH12.5以上) |
| 廃油 | 揮発油類・灯油類・軽油類(引火点がおおむね70℃未満の燃えやすい廃油) |
| 特定有害産業廃棄物 | 特定の施設から出る廃酸・廃アルカリ・汚泥などで、重金属・有機塩素化合物などが判定基準を超えるもの、PCBを含む廃油 など |
特別管理産業廃棄物は、専用の許可(特別管理産業廃棄物収集運搬業・処分業)を持つ業者にしか委託できません。また、委託する前に、種類・数量・性状・荷姿などを文書で処理業者に通知する義務があります。区分の詳細は特別管理産業廃棄物とはで解説しています。
主な処理方法
- 中和:廃酸と廃アルカリを中和し、生じた沈殿物を脱水・処分する
- 焼却:廃油・廃溶剤、有機物を多く含む廃液を焼却する
- 再生利用:廃溶剤の蒸留再生、廃油の燃料化、廃酸からの金属回収 など
- 物理化学処理:凝集沈殿・酸化還元などで有害物質を取り除く
同じ「廃液」でも、成分によって受け入れられる施設が異なります。再生利用できる廃液は、処理費が下がることもあります。
業者を選ぶときに確認すること
- 許可の区分:廃酸・廃アルカリ・廃油・汚泥のうち必要な区分の許可があるか。特別管理産業廃棄物の場合は、その許可があるか
- 処理方法と受け入れ条件:含まれる物質(重金属、ハロゲン、硫黄分など)や濃度で受け入れの可否が変わる
- 容器と運搬:ドラム缶・ポリ容器・タンクローリーのどれで運ぶか。容器の回収・洗浄まで対応するか
- 少量への対応:少量・多品種の場合、まとめて回収できるか
- 分析の要否:受け入れ前に成分分析を求められるか、費用は誰が負担するか
委託の前にそろえる情報
処理業者が受け入れを判断するには、発生工程、使った薬品、成分・濃度、pH、引火点、荷姿、量などの情報が必要です。環境省の「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」では、廃液を含む汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリについて、廃棄物データシート(WDS)で情報を伝えることを推奨しています。作り方は廃棄物データシート(WDS)の書き方をご覧ください。
やってはいけないこと
- 種類の違う廃液を混ぜる:酸とアルカリ、酸化剤と還元剤などを混ぜると、発熱・有毒ガスの発生などの危険がある
- 排水に流す:工場の排水は水質汚濁防止法・下水道法などの基準があり、基準を満たさない廃液を排水に流すことはできない
- 成分を伝えずに委託する:情報が不足していると、処理施設での事故や不適正処理につながる。必要な情報を提供しなかった場合、委託基準違反となる可能性がある
なお2026年1月からは、化管法(PRTR制度)で届け出ている第一種指定化学物質を含む廃棄物(含有率1%以上、特定第一種は0.1%以上)を委託する場合、その物質の名称と量または割合を委託契約に含めることが義務になりました(廃棄物処理法施行規則第8条の4の2)。詳しくはWDSの書き方をご覧ください。
よくある質問
Q. 少量の廃液でも業者に委託できますか?
できます。ただし少量の場合は、処理費より運搬費の割合が大きくなりやすいため、ほかの廃液とまとめて回収できる業者を探すと効率的です。
Q. 成分が分からない古い廃液はどうすればよいですか?
成分の分析をしてから処理先を探します。ラベルのない薬品などの扱いは処理困難物とはも参考にしてください。
Q. 拠点ごとに業者が違っても問題ありませんか?
問題はありませんが、拠点ごとに区分の判断や契約内容がばらつきやすくなります。本社で廃液の一覧と区分、委託先をまとめて管理すると、確認の漏れを防げます。
Canopusは、廃液の区分の整理、WDSの作成支援、分析の手配、受け入れ可能な処理業者の選定と見積比較までを支援しています。処理の委託契約は、お客様と処理業者が直接結びます。東京本社から関東・全国の拠点に対応しています。