廃棄物データシート(WDS)の書き方|16項目の記入ポイントと2026年の改正
廃棄物データシート(WDS)は、排出事業者が処理業者に廃棄物の成分や性状を伝えるための書式です。環境省の「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」(最新は2025年12月の第3版)で様式が示されており、汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリなど、見た目では危険性が分かりにくい廃棄物を委託するときに使われます。
この記事では、WDSが必要な理由、2026年1月の改正、16の記載項目と書き方のポイント、提供のタイミングを整理します。
監修:劉 泰宏(株式会社Canopus 代表取締役)
東京大学教育学部卒業後、野村総合研究所に入社。NRI Singaporeへの出向を経て、同社Department Headを務める。2022年に株式会社新関西テクニカ常務取締役、同年12月に株式会社Canopus代表に就任。
WDSが必要な理由
廃棄物処理法の施行規則では、産業廃棄物の委託契約書に、廃棄物の性状・荷姿、保管中の性状の変化、ほかの廃棄物と混ざった場合の支障など、適正な処理に必要な情報を含めることが定められています。また、契約期間中にこれらの情報が変わったときの伝え方も、契約で決めておく必要があります。
WDSの様式そのものの使用は義務ではありませんが、必要な情報を提供することは法的な義務です。明らかに必要な情報を伝えなかった場合は、委託基準違反となる可能性があります。WDSは、この情報提供を漏れなく行うための標準的な書式です。
2026年1月からの改正:化管法(PRTR制度)の第一種指定化学物質等取扱事業者が、届け出た第一種指定化学物質を含む廃棄物(含有率1%以上、特定第一種指定化学物質は0.1%以上)を委託する場合は、その物質の名称と量または割合を委託契約に含めることが義務になりました(廃棄物処理法施行規則第8条の4の2)。収集運搬の契約も対象です。既存の契約は、2026年1月1日以降の更新から対象になります。契約書に「別途WDSによる」と記載し、WDSで伝える方法も認められています。
2012年に利根川水系の浄水場で水道水質基準を超えるホルムアルデヒドが検出された事案では、委託された廃液にホルムアルデヒドのもとになる物質が高い濃度で含まれていたことが処理業者に伝わっていなかったことが原因と推定されています。この事案を受けて、2013年にガイドラインが改訂されました(第2版)。その後、化学物質の情報提供に関する施行規則の改正(2026年1月1日施行)を踏まえ、2025年12月に第3版が公表されています。
出典:環境省「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(WDSガイドライン)」
WDSの16項目(第3版の様式)
| 項目 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 1. 作成年月日 | 改訂したときは日付を更新し、変更履歴を残す |
| 2. 排出事業者の名称等 | 事業場名・担当部署・連絡先まで書く |
| 3. 廃棄物の名称 | 社内の呼び方ではなく、内容が分かる名称にする(例:「めっき工程 酸洗い廃液」) |
| 4. 廃棄物の発生工程 | どの工程で、どんな原料・薬品を使って発生するか |
| 5. 廃棄物の種類 | 廃酸・廃アルカリ・廃油・汚泥など。特別管理産業廃棄物に当たるかも記載する |
| 6. 特定有害廃棄物 | 含むことが工程から明らかなものは「○」、含む可能性があるものは「△」 |
| 7. 廃棄物の組成・成分情報 | 主な成分と含有量(範囲でよい)。化管法の第一種指定化学物質を含む場合は、物質名と量または割合を書く。分析結果があれば添付する |
| 8. その他含有物質 | 処理に影響する物質(ハロゲン、硫黄、窒素化合物など) |
| 9. 水道水源における消毒副生成物前駆物質 | ホルムアルデヒドなどのもとになる物質を含むかどうか |
| 10. 有害特性 | 引火性、腐食性、反応性、毒性、感染性など |
| 11. 廃棄物の物理的・化学的性状 | 形状、色、臭い、pH、比重、引火点、粘度など |
| 12. 品質安定性 | 保管中の変化(発熱、ガスの発生、固化、分離など) |
| 13. 荷姿 | ドラム缶、ポリ容器、タンクローリー、フレコンなど |
| 14. 排出頻度・数量 | 月あたりの量、1回あたりの量 |
| 15. 特別注意事項 | 混ぜてはいけない物、取り扱い時の注意、消防法・毒物及び劇物取締法などの該当、過去のトラブルなど |
| 16. その他の情報 | サンプルの提供の可否、SDSの添付など |
出典:環境省「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」(2025年12月)
書くときのコツ
- 分からない項目は「不明」と書く:空欄にすると「該当なし」と誤解されることがある
- 使った薬品のSDSを活用する:原料の成分やCAS番号はSDSから転記する
- 処理業者と一緒に作る:ガイドラインでは、排出事業者と処理業者が発生工程や使用薬品を確認しながら作り、双方が記名して合意の記録を残すことが望ましいとされています
- 容器と対応させる:容器に管理番号のラベルを貼り、どのWDSの廃棄物か分かるようにする
提供するタイミング
| 場面 | やること |
|---|---|
| 見積・新規契約のとき | 処理業者が受け入れの可否と費用を判断できるよう、事前にWDSを渡す。双方が確認した最終版を契約書に添付する |
| 委託のたび | 性状・成分が変わらなければ、毎回渡す必要はない |
| 性状が変わったとき | 製造工程の変更などで性状が変わったら、すぐに新しいWDSを渡す。廃棄物の種類が変わる場合は契約の変更も必要 |
特別管理産業廃棄物を委託する場合は、契約の前に、種類・数量・性状・荷姿などを文書で処理業者に通知する義務があります(廃棄物処理法施行令第6条の6)。
多拠点の企業が注意したいこと
- 同じ名前の廃棄物でも、拠点ごとに成分が違う:拠点ごとにWDSを作り、本社で一覧にして管理する
- 担当者の異動で更新が止まる:工程や原料を変えたときにWDSを見直すルールを決めておく
- 契約書とWDSの対応が取れていない:契約の更新のたびに、添付したWDSが最新か確認する
よくある質問
Q. WDSはすべての産業廃棄物に必要ですか?
ガイドラインが主な対象としているのは、汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリなど、見た目では有害性が分かりにくい廃棄物です。市販製品が廃棄物になった場合など、性状が明らかで生活環境への支障のおそれがない廃棄物は、WDS以外の方法で情報を伝えることもできます。
Q. WDSの様式はどこで手に入りますか?
環境省のガイドラインに様式例が掲載されています。処理業者が独自の様式を用意している場合もあります。
Q. 成分がはっきり分からない場合はどうすればよいですか?
分かる範囲で記入し、不明な項目は「不明」と書いたうえで、必要に応じて分析します。処理先探しの進め方は処理困難物とはをご覧ください。
Canopusは、廃棄物の情報の整理とWDSの作成支援、分析の手配、受け入れ可能な処理業者の選定と見積比較、拠点ごとのWDS・契約の一元管理までを支援しています。処理の委託契約は、お客様と処理業者が直接結びます。東京本社から関東・全国の拠点に対応しています。