PCB特措法の改正(2026年)|低濃度PCB使用製品の届出・管理と企業がやること
2026年6月、PCB特措法(ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法)の改正法が成立しました。施行は2027年4月1日です。今回の改正で、使用中の低濃度PCB使用製品にも届出と管理の義務がかかり、使い終わった機器は「使用を終えてから一定期間内に処分」するしくみに変わります。
一方で、すでに廃棄物になっている低濃度PCB廃棄物の処分期限(2027年3月31日)は延びていません。この記事では、改正の中身と、変圧器やコンデンサーを持つ企業・建物所有者が今からやることを整理します。
監修:劉 泰宏(株式会社Canopus 代表取締役)
東京大学教育学部卒業後、野村総合研究所に入社。NRI Singaporeへの出向を経て、同社Department Headを務める。2022年に株式会社新関西テクニカ常務取締役、同年12月に株式会社Canopus代表に就任。
PCB特措法の改正の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 成立・公布 | 2026年6月12日成立、6月19日公布 |
| 施行 | 2027年4月1日(JESCO法の改正部分は政令で定める日) |
| 低濃度PCB使用製品(使用中) | 所有・使用の状況、使用場所、使用終了の見込みなどを都道府県知事に届け出て、政令の基準に従って管理する(新設) |
| PCB廃棄物(使用を終えたもの・新たに見つかったもの) | 保管状況を届け出て、使用終了日または判明日から5年を超えない範囲で政令が定める期間内に処分する。毎年度の届出、処分完了の届出も必要 |
| 高濃度PCB | JESCOの処理事業は2026年3月末で終了。今後新たに見つかったものも届出のうえ期間内に処分する |
| 電気事業法との関係 | 電気工作物のうち政令で定めるものは、電気事業法の定めによる |
| 罰則 | 低濃度PCB使用製品の届出義務違反なども罰則の対象に加わる |
出典:環境省「PCB特措法及びJESCO法の一部を改正する法律案について」(令和8年4月)
なぜ改正されたのか
高濃度PCB廃棄物は、国が全額出資するJESCO(中間貯蔵・環境安全事業)が処理してきました。2026年3月末時点で、変圧器・コンデンサー等が約39万6千台、安定器・汚染物等が約2万1千トン処理され、処理はほぼ完了しています。これを受けて、JESCOの処理事業は終了しました。
一方、低濃度PCBは、製造工程などで意図せずPCBが混ざった絶縁油を使う機器が多く、今も使われているものが相当数あります。環境省によると、任意の届出だけで変圧器・コンデンサー等が約39,400台(2024年3月末時点)あり、実際の数はこれより多いとされています。2027年3月で一律に期限を切ると、その後に使用を終える機器の行き場がなくなるため、「使い終わったら一定期間内に処分」するしくみに改められました。
2027年3月31日の期限はどうなるか
誤解されやすい点ですが、既存の低濃度PCB廃棄物の処分期限(2027年3月31日)は延長されていません。改正前の法律で保管している低濃度PCB廃棄物は、旧法の期間内(2027年3月末まで)であれば旧法が適用され、期限を過ぎたものは附則の経過措置の対象になります。
つまり、すでに使っていない変圧器やコンデンサー、保管中の絶縁油などは、これまでどおり2027年3月31日までに処分または処分の委託をする必要があります。期限後の扱いについては、低濃度PCB廃棄物の処分期限|過ぎたらどうなる?で詳しく解説しています。
改正で企業・建物所有者がやること
1. 使っている電気機器を洗い出す
まず、受変電設備の変圧器・コンデンサー、X線装置、溶接機、昇降機の制御盤など、絶縁油を使う機器を一覧にします。千葉県の案内では、絶縁油を入れ替えられる変圧器は1993年(平成5年)以前、絶縁油を封じ切ったコンデンサーは1990年(平成2年)以前の製造品にPCB汚染の可能性があるとされています(メーカーによって例外あり)。
2. PCBが入っているかを確かめる
銘板で製造年とメーカーを確認し、メーカーの公表資料と照らし合わせます。油を採取できる機器は、絶縁油を分析してPCB濃度を測ります。通電中の設備から採油する場合は、感電のおそれがあるため電気主任技術者に相談してください。
3. 使用中のものは届出・管理の準備をする
2027年4月以降、使用中の低濃度PCB使用製品は都道府県知事への届出と、政令の基準に従った管理が必要になります。届出事項や管理基準の詳細は政令・省令で定められる予定のため、今のうちに「どの拠点に・何が・いつまで使う見込みか」を台帳にしておくと対応が早くなります。
4. 使っていないもの・保管中のものは期限内に処分する
すでに使っていない機器や保管中の低濃度PCB廃棄物は、2027年3月31日が期限です。分析・運搬・処理の日程調整には時間がかかり、期限前は依頼が集中しやすいため、早めに処理先を決めて委託契約を結びます。
5. 毎年度の保管状況の届出を続ける
PCB廃棄物を保管している事業者は、毎年度、保管・処分の状況を都道府県等に届け出ます(例:千葉県は毎年6月30日まで)。拠点が多い企業は、届出の漏れが起きやすいので注意が必要です。
多拠点の企業・建物所有者が注意したいこと
- 拠点ごとに担当が違い、全体像がつかめない:工場・店舗・テナントビルなどで受変電設備の管理者が異なり、どこに何台あるかを本社が把握していないケースが多くあります。
- テナント・オーナー間で所有者があいまい:届出や処分の義務を負うのは所有者です。賃貸物件では、設備の所有者を契約書で確認しておきます。
- 建物の解体・改修で見つかる:改正後は、期限後に見つかった高濃度PCB廃棄物も届出・期間内の処分が必要です。解体前の調査に、PCB含有機器の確認を組み込みます。
- 運搬・処理は特別管理産業廃棄物の許可業者に:PCB廃棄物は特別管理産業廃棄物です。収集運搬・処分とも、特別管理産業廃棄物の許可(低濃度PCBは無害化処理認定施設などの処理施設)を持つ業者に委託します。
よくある質問
Q. 2027年4月以降も、低濃度PCBの変圧器を使い続けてよいですか?
改正後は、届出と管理基準を守ることを前提に、使用中の製品を管理するしくみになります。ただし、電気事業法の対象となる電気工作物の扱いなど、詳細は政令で定められます。今後公表される政省令を確認してください。
Q. 使用を終えた後、何年以内に処分すればよいですか?
使用終了日(または判明日)から「5年を超えない範囲で政令が定める期間」です。具体的な年数は政令で定められます。
Q. すでに保管している低濃度PCB廃棄物も、5年の猶予がありますか?
ありません。既存の低濃度PCB廃棄物は、2027年3月31日までに処分または処分の委託が必要です。
Canopusは、多拠点企業や建物所有者向けに、PCB含有機器の洗い出し・分析の手配、処理業者の選定と見積比較、届出や記録の整理までを支援しています。処理の委託契約は、お客様と処理業者が直接結びます。東京本社から関東・全国に対応し、関西はグループ会社の新関西テクニカも運搬に対応しています。