排出事業者責任とは?誰が排出事業者になるか・本社が負う義務をわかりやすく解説
廃棄物処理法では、事業活動で出た廃棄物は、それを出した事業者が自らの責任で適正に処理しなければならないとされています。これが「排出事業者責任」です。処理を業者に委託しても、この責任はなくなりません。
この記事では、誰が排出事業者になるのか、排出事業者が具体的に何をしなければならないのか、多拠点の企業が本社でどう管理すればよいのかを解説します。(2026年10月時点の法令・公的機関の公表資料にもとづいて作成しています。)
監修:劉 泰宏(株式会社Canopus 代表取締役)
東京大学教育学部卒業後、野村総合研究所に入社。NRI Singaporeへの出向を経て、同社Department Headを務める。2022年に株式会社新関西テクニカ常務取締役、同年12月に株式会社Canopus代表に就任。
排出事業者責任とは
廃棄物処理法第3条第1項は「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と定めています。産業廃棄物については、自ら処理するか、許可を持つ業者に委託して処理します(第11条・第12条)。
ポイントは、委託した後も責任が続くことです。委託先が不法投棄をした場合、委託の手続きに不備があったり、適正な対価を支払っていなかったりすると、排出事業者にも原状回復などの措置命令が出されることがあります(第19条の5・第19条の6)。
誰が排出事業者になるのか
| ケース | 排出事業者 | ポイント |
|---|---|---|
| 自社の工場・店舗・事務所 | その事業を行っている会社 | 拠点ごとに担当者がいても、責任を負うのは会社 |
| 建設工事 | 元請業者 | 下請業者が出した廃棄物も、元請業者が排出事業者になる(第21条の3) |
| ビルのテナント | 事業を行っているテナント | ビル管理会社がまとめて回収していても、契約関係を確認する |
| グループ会社 | それぞれの会社 | 親会社が代わりに排出事業者になることはできない。親会社がまとめて契約する場合も名義と責任の所在に注意 |
| 機器の保守・修理 | 保守を行う事業者になる場合がある | 交換部品などの扱いは、作業内容と契約で判断する |
建設工事で下請業者が運搬できる例外
建設工事では元請業者が排出事業者ですが、請負代金500万円以下の維持修繕工事などで、1回の運搬量が1立方メートル以下であること、運搬途中で保管しないことなど、すべての条件を満たす場合に限り、下請業者が自ら運搬できる特例があります。条件を満たさないまま下請業者が運搬すると、無許可での収集運搬になるおそれがあります。
排出事業者が負う主な義務
| 義務 | 内容 | 違反した場合の罰則の例 |
|---|---|---|
| 許可業者への委託 | 収集運搬・処分それぞれの許可を持つ業者に委託する | 無許可業者への委託:5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金 |
| 委託契約書 | 業者ごとに書面で契約し、許可証の写しを添付して5年間保存 | 委託基準違反:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| マニフェスト | 委託のたびに交付し、返送を確認して5年間保存 | 不交付・虚偽記載など:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 保管基準 | 事業場内の保管場所に掲示板を設け、飛散・流出を防ぐ | 改善命令の対象 |
| 処理状況の確認 | 委託先で適正に処理されているかを確認するよう努める | 不法投棄時に措置命令の対象になりうる |
| 各種報告 | 多量排出事業者の処理計画、紙マニフェストの交付等状況報告など | 20万円以下の過料など |
罰則は2025年6月の刑法改正により、懲役が「拘禁刑」に変わっています。また、両罰規定により、違反した従業員だけでなく法人にも罰金が科されます。詳しくは廃棄物コンプライアンス完全ガイドをご覧ください。
本社で排出事業者責任を果たすための進め方
- 拠点と委託先の一覧をつくる:拠点ごとの委託先、契約書、許可証の期限、マニフェストの運用を本社で一覧化します。
- 契約と許可を点検する:契約書の記載漏れや、許可の期限切れ・品目の不足がないかを確認します。
- 委託先を実際に確認する:処理施設を訪問し、保管や処理の状況を記録に残します。
- 社内ルールと担当を決める:拠点の担当者が替わっても運用が続くよう、手順と点検の時期を決めます。
担当者が最初に取り組むことは廃棄物管理担当者の仕事とは?、多拠点の管理は多拠点企業の廃棄物管理一元化で解説しています。
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よくある質問
Q. 処理を業者に委託すれば、排出事業者の責任はなくなりますか?
A. なくなりません。委託後も、委託基準を守っていたか、マニフェストで処理の終了を確認していたか、委託先の処理状況に注意を払っていたかが問われます。
Q. ビルの管理会社がごみをまとめて回収しています。排出事業者は誰ですか?
A. 原則として、事業活動を行っているテナントが排出事業者です。管理会社が回収を取りまとめている場合も、契約の当事者や費用負担の関係を確認しておきましょう。
Q. 親会社がグループ会社分をまとめて委託できますか?
A. 排出事業者は廃棄物を出した各社です。親会社が窓口として手配することはできても、契約やマニフェストの名義、責任の所在は各社で整理する必要があります。