産業廃棄物処理業の欠格要件とは?一覧・役員と株主の範囲・M&A時に確認すべきこと
産業廃棄物処理業の許可には「欠格要件」が定められており、会社や役員がこれに該当すると、許可は必ず取り消されます。新規の許可申請のときだけでなく、役員の交代やM&Aで経営陣・株主が入れ替わるときにも確認が欠かせません。この記事では、欠格要件の一覧と対象となる人の範囲、該当してしまったときの扱い、M&Aや役員交代の前に確認すべきことを整理します。
監修:劉 泰宏(株式会社Canopus 代表取締役)
東京大学教育学部卒業後、野村総合研究所に入社。NRI Singaporeへの出向を経て、同社Department Headを務める。2022年に株式会社新関西テクニカ常務取締役、同年12月に株式会社Canopus代表に就任。
欠格要件とは
欠格要件とは、廃棄物処理業の許可を受けられない、あるいは許可を維持できない条件のことです。産業廃棄物処理業については、廃棄物処理法第14条第5項第2号に定められています(一般廃棄物処理業の欠格要件である第7条第5項第4号を引用しています)。
許可を受けた後に欠格要件に該当した場合、都道府県知事は許可を取り消さなければなりません(第14条の3の2)。行政の裁量で見逃される余地がない「必要的取消し」である点が、他の違反との大きな違いです。
欠格要件の一覧
| 区分 | 内容(要約) | 期間 |
|---|---|---|
| 心身の故障 | 心身の故障により業務を適切に行えない者 | ― |
| 破産 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 | 復権まで |
| 拘禁刑以上の刑 | 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 | 5年 |
| 特定の法令違反による罰金刑 | 廃棄物処理法などの生活環境の保全に関する法令や、暴力団対策法、刑法の一部の罪(傷害・暴行・脅迫など)、暴力行為等処罰法に違反して罰金刑に処せられ、執行を終わってから5年を経過しない者 | 5年 |
| 許可の取消し | 廃棄物処理業などの許可を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者(取消しを受けた法人の役員であった者を含む場合あり) | 5年 |
| 取消し逃れの廃止届 | 取消しの手続中に事業の廃止届を出した者など | 届出から5年 |
| 不正・不誠実のおそれ | 業務に関し不正または不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者 | ― |
| 暴力団員等 | 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者、暴力団員等が事業活動を支配する者 | 5年 |
| 法人・個人の関係者 | 法人の役員・政令で定める使用人、未成年者の法定代理人、個人の政令で定める使用人が上記に該当する場合 | ― |
※刑法の改正により、2025年6月から懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されています。
※正確な要件は廃棄物処理法の条文と、許可を受けた自治体の手引きで確認してください。
対象となる人の範囲
欠格要件は、会社そのものだけでなく、次の人にも及びます。
- 役員:取締役、執行役、業務執行社員のほか、相談役・顧問など名称にかかわらず、これらと同等以上の支配力を持つと認められる人
- 政令で定める使用人:本店・支店の代表者や、契約を結ぶ権限を持つ営業所の代表者
- 株主:発行済株式の5%以上を持つ株主などは許可申請書や変更届の記載対象です。会社の経営を実質的に支配していると認められる場合は、役員と同様に欠格要件の判断対象になり得ます
社外の人を役員や顧問に迎えるとき、出資を受けて株主が変わるときも、確認の対象になることを押さえておきましょう。
欠格要件に該当するとどうなるか
許可は必ず取り消される
役員の一人が欠格要件に該当しただけでも、会社の許可が取り消されます。実際に、刑法の傷害罪で罰金刑の執行を終えてから5年を経過していない人を役員に就任させたことで、産業廃棄物収集運搬業の許可が取り消された例があります(平成30年 宮城県)。
2週間以内に届出が必要
役員などが欠格要件に該当するに至ったときは、2週間以内に許可を受けた自治体へ届け出なければなりません。
取消しの影響はほかの会社にも及ぶことがある
許可を取り消された法人の役員であった人は、取消しの理由によっては5年間欠格要件に該当し、その人が役員を務める別の会社の許可にも影響が及ぶことがあります。グループ会社で役員を兼ねている場合は特に注意が必要です。
M&A・役員交代の前に確認すべきこと
- 新たに就任する役員・顧問、5%以上の株主となる人や法人の経歴(刑罰・行政処分の有無)
- 買い手側の会社やその役員が、過去に廃棄物処理業などの許可取消しを受けていないか
- 売り手の現役員・株主に欠格要件に該当する人がいないか(クロージング後に発覚すると許可を失う)
- 誓約書、住民票、登記されていないことの証明書、身分証明書など、自治体が求める書類をそろえられるか
- 契約書で、欠格要件に該当しないことの表明保証や、該当した場合の取扱いを定めているか
刑罰の有無は本人の申告に頼る部分が大きいため、就任前の確認手続と、契約での手当ての両方を組み合わせることが大切です。
社内で備えておきたい体制
- 役員・顧問の就任前に、欠格要件の確認と誓約書の取得を行うルールをつくる
- 役員・株主の変更は、変更届(原則10日以内、登記事項証明書が必要なものは30日以内)とあわせて管理する
- 従業員や役員が刑事事件に関わった場合の報告ルートを決めておく
まとめ
- 欠格要件に該当すると、産業廃棄物処理業の許可は必ず取り消される
- 対象は会社だけでなく、役員・顧問・政令で定める使用人、実質的な支配力を持つ株主などにも及ぶ
- 該当したときは2週間以内の届出が必要
- M&Aや役員交代の前に、新しい役員・株主の確認と、契約での表明保証を組み合わせて備える